ドラゴンクエストXI 過ぎ去りし時を求めて(PS4)
ゲームショップにて
「あ、小松お姉ちゃん」
「幸村君じゃない。どうしたの? こんな所で」
「お母さんが好きなゲームソフトを一つ買っていいって」
「なるほどお祝いか。それで、もう何を買うか決めた?」
「まだ」
「なら、【ドラクエXI】はどう? 買わなくても、私が貸してあげるよ」
「【ドラクエ】ってあの? 3DSのやつをやったことあるけど、あれ古臭いよね」
「……古臭いって言ったか? そっか、きっと幸村君は楽しみ方をよく理解してなかったんだね。そうだ! 貸してあげるついでに、私が【ドラクエ】の事をじっくり教えてあげよう。いいよね?」
「え? あ、いや。うん……」
***
「【ドラクエ】は国民的RPGで、幸村君のお母さんが子供の頃から今日まで、日本全国でずっと親しまれてるんだよ」
「日本? 海外は?」
「外国のことはいいから。それで、今日本にあるRPGの殆どが、【ドラクエ】を参考に作られたんだよ。あのFFもそう」
「ファイナルファンタジー? あれ凄いよね、作品毎で全然違うゲームでさ。【ドラクエ】は?」
「【ドラクエ】は伝統を守るから、あんまりガラッと変わったりしないね」
「そっか。でもそれじゃファイナルファンタジーと比べてワンパターンで飽き――」
「【ドラクエ】は伝統を守るから。わかれよ」
「ごめんなさい……」
「【XI】も基本に忠実に出来てるから、【ドラクエ】初心者の幸村君でも安心だね」
***
「【XI】のシステムは全体的にVIIIに近いね。と言ってもわからないか」
「僕が3DSでやったのは多分VIIIだよ。仲間がずっと4人から増えなくてさ」
「【XI】は賑やかだよ。パッケージに載ってる7人に加えて、中盤では意外な人物も加入するんだ」
「へえ」
「途中でベロニカが死んじゃうんだけど、スキルはセーニャが引き継ぐから大丈夫だよ」
「……え?」
「それで魔王を一回倒すんだけどね、やっぱり仲間が一人欠けたままってのもあれだからタイムスリップして――」
「え? いやいやいや、何言ってるの? それ言っちゃ駄目なやつだよね?」
「私はネタバレとか気にしないから」
「僕は気にするんだよ! お姉ちゃんおかしいよ……」
***
「【XI】はカジノが楽しくて、特に『マジスロ』は本物のスロット顔負けの出来だよ。ほらこれ」
「スロットって何?」
「街中に大きくて騒々しいお店がよくあるでしょ? そこで遊べるゲームだよ」
「あそこは子供は入っちゃ駄目だってお母さんに言われたよ」
「でしょうね」
「【ドラクエ】だといいの?」
「いいんじゃない」
「……それっておかしくない? 【ドラクエ】は国民的RPGなんでしょ? みんなが楽しめるように作られてる筈なのに、なんで子供がやっちゃ駄目なゲームが置いてあってしかもやってよくて――」
「うるせえな。『マジスロ』は楽しいんだよ」
「はい」
***
「もう【ドラクエ】の楽しみ方は十分わかった?」
「はい」
「じゃあ、これから暫くゲームは【ドラクエXI】だけでいいね」
「いいえ」
「なんだって?」
「――逃げやがった」